法隆寺の宮大工、西岡常一氏の「木に学べ」です。
10年以上も前に読んだ本ですが、今回事務所の片付けをしておりましたら、段ボールから出てきました。西岡棟梁の著書です。棟梁が話した内容を字興ししたのでしょうね。久しぶりに再会し読んでしまったのです。文章のほとんどが、棟梁の話口調です。ですから、棟梁の話す声が耳元で聞こえているような感じで2時間前後で読み終えました。
法隆寺の昭和の大修理から薬師寺の金堂建立、徒弟制度、道具、宮大工の生活、建築学者とのやりとり・・・全でを棟梁がここで話しているように聞こえてくるのです。本当に不思議な感覚です。
あえて、本の具体的な内容にはあまり触れませんが、この本の中で宮大工西岡氏の普段から質素な生活ぶりがうかがえます。また、実子が跡継ぎにならなかったことでも大変ショックだったでしょう。日本に宮大工と言う制度がなくなるまさにその時の最後の宮大工としてどう考えたのかもっと本人の口から聞きたいものです。
現在の工務店経営は利益が出ないと倒産に追い込まれます。一時も緊張がほぐれることがないでしょう。しかしほんの数時間の時間があるのであれば同じ木造建築に携わった共感できるテーマを持つ氏の話を聞いてみるもの経営の肥やしになると感じます。
今の現場に何が足りないのか?今の後継者や新人社員に何をどのように教えればよいのか?木造建築を通して正義とはどんなことか?そのへんが再確認できる内容だと思うのです。現在は、仕事もさることながらプライベートの時間や生活も重要視されるところです。また、仕事をする上では金銭の問題も無視できません。しかし、数十年前の西岡氏は当時にいながら現在の工務店経営をしっかり予言していたように感じてならないのです。
なんにせよ、難しい内容ではありませんし図や写真なども丁寧に配置されています。「木に学べ」は一読の価値ありです。異業界のかたでも下手なビジネス書を読むより確実にためになるはずです。